「じゃあ、アンタが言う『意味のあること』って何?」

意味のないことはしないと言ったら、君はそう訊いてきた。
驚いた。
自分がそんなものを持ってないってことに。
そう思うと、自然に笑みがもれた。

アレからもぅ何年も経っているのに、捕らわれ続けている自分に気づいて笑えた。
自分にとって意味のあったことは、あの時を境になくなってしまった。
あの時から自分は前へ進めていない。
あまりに情けない。
そんな自分を何故か君に見せたくなくて俯いた。
そして、情けなさすぎる自分に小さく呟いた。
「いい加減忘れろよ…」と。


俺にとって『意味のあること』はあの時を境になくなったらしい。
でも、あの時にはあったんだ。
今はないけど、過去にはあった。

でも、それがどうした?
今はないものを、確かにあったのだと主張したところで何になる?


それこそ、『意味のないこと』だ。
すべてが、『意味のないこと』ばかりだ。
『意味のあること』なんて、ひとつもないのかもしれない。

けれど、昔は確実にあったんだ。
だから、
だから、「さぁね」と君に言った。






君にとって『意味のあること』とは何ですか?
『意味のないこと』って何ですか?







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