君の印象は、無機質だった。

まだ子どもなのに、諦めている。
自分の人生そのものを。
多分、夢も希望も未来も、君には見えていない。
子どもらしからぬ、子ども。

ただ、それだけ。
死神でも、自分と同じ罪人という感じもしない。
ただの人間という器。
死神じゃない君は、俺を終わらせてはくれないんだろうね。
罪人じゃない君は、俺と傷の舐めあいができないね。

 ――つまらないね。

でも、君はただの子どもではない。
君は器なのだから。
だから、まだ何も手は出さない。

もしかしたら、君はこれから死神に変わっていくのかもしれないし、
本当は罪人でそれをうまく隠してるだけかもしれない。
だから、もぅ少しだけ付き合ってあげる。
だから、もっと楽しませてよ。
歪んだ期待を込めて、昨日と同じように重い扉を開ける。





まだ昼前だったせいか、君は起きていた。
何をするわけでもなくベッドから身体を起こした状態で、あの小さな空を見ていた。

空を見ても、何も起こらないのに。
ここから、出ることなんてできやしない。
鉄格子はきっちりと嵌められているし、
もしそれがなかったとしても、飛び降りたらそこには死があるだけ。

君には、自由が手に入ることはない。
手に入るとしたら、それこそ本当に死んだときだけなんじゃないの。
それを自分が一番解っているのだろうに、それでも空を見る君。
それって、愚かでつまらないよ。

でも、空を見る君の目に絶望や哀しみが見れないのは、素敵だね。
君の目は、何も映さない。
だからこそ、面白い。
はりついた笑みを浮かべ 今日も一日君への査定を始めよう。



そして、昨日と同じように、お互いに何も話さないまま時間が流れていく。
君は相変わらず 窓に目を向けたまま。
けれど、ふいに視線を向けてきた。
静かな、けれど凛とした響きを含む声で訊いて来た。

「なぁ、アンタも俺に説教するの?」

どうでもいいことを訊くようにしか、君は話せないの?
煩いガキはキライだから、それに比べたら別にいいけどね。
それどころか、君は面白いから好きだよ。
だから、笑顔をつけて答えてあげた。

「まさか。そんな意味のないことはしないよ」と。







Back     Next