1階は医務室と外科。
2階は内科。
3階が入院患者用の大部屋1室と個室が2室。
4階が、院長室と薬の管理室で、5階は特別室。
特別室と言っても、よっぽどでないと入れない。
昔から懇意にしてる人とか、権力持ってる人とか。
でも、そういう人たちでもなんだかんだ理由つけて断ってるらしい。
だから、実質一般の人たちは3階までしか行けなくて、病院関係者も4階までしか行けない。
6階まで行けたとしても、この鍵がないと先へは進めない。
エレベーターの扉が静かに開く。
6階の『特別病棟』、ねぇ。
ま、そう言えなくもないか。
エレベーターから降りると、そこは一瞬ホテルかと思うくらいの豪華な造りだった。
5階以下のコンクリートの冷たい廊下などではなく、毛先の長い柔らかな絨毯が奥まで続いている。
色が赤いってことは、血が目立たないためだったら面白いのに、
なんてことを考えたけれど、残念なことに違うのだろうね。
フロアには3つの扉。
どれも豪華で重厚な扉。
鍵もカードロックなんて、ホントにホテル並み。
でも、手前とその隣はダミーでしかない。
本当に特別病棟らしく室内は豪華な造りになってるけど、
5年前にこのフロアを改築して造られて以来、一度も使われてないダミーの病室。
『特別病棟』の所以となった原因の部屋を隠すためだけに造られた 偽りの特別室たち。
でも、ダミーと言えば、こっちのがダミーなんだろうね。
そう思いながら、最奥の扉にカードキーを差し入れる。
ピー、という電子音のあと、
『警備を解除します』という機械の声がする。
それを確認してドアを開けると、さっきまでの豪華さが嘘みたいに消えた。
床は冷たいコンクリートに戻り、目の前にまた扉がある。
豪華な造りなんかじゃなく、コンクリート剥き出しの壁に鉄の重圧な扉。
その扉の上のほうには、ちょうど顔が見えるくらいの大きさの覗き穴があった。
けれど、ガラス張りなんかじゃなく、そこにはめられているのは鉄格子。
足元には、食事を入れるであろう細長い開閉式の小さな扉。
カードキーとは別に昔ながらの鍵を渡されてたから、ある程度は予想できていたけどここまでとはね。
まるで、閉鎖病棟だ。
あぁ、でも今は閉鎖病棟とはいえ、ここまでひどい扱いはないのだからどちらかというと刑務所?
だったら、ここに閉じ込められてる君は罪人で囚人なんだ。
ねぇ、どんな罪を犯したの?
5年前、6歳と言う幼さで。
君は出会う前から、俺を本当に楽しませてくれるね。
君が死神なら、俺を終わらせてくれるかな。
君が罪人なら、俺と同じだね。
一時でも傷の舐めあいでもして、退屈をしのぎながら楽しもうか?
ねぇ、ほら。
君が死神でも罪人でも、俺を楽しませてくれる。
早く、君に会いたいね。
だから、今 最後の扉を開けるよ――
04.02.08 微修正。
04.04.13 微修正。
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