「意外にキレイなんだな。」

それが、俺の部屋に入ってきて最初に口にしたセリフだった。

「…そんなに汚くしてそう?」

「…そういうワケじゃないけど」

口ごもって、居心地が悪そうに床に君は座った。








人殺しと少年 3
「はい」 天井に吊るされた電球を睨むように見てた少年に、ホットミルクを渡す。 少年は、ありがとうと小さく言い、ゆっくりと飲む。 その様子を横目に見つつ、自分はブラックコーヒーをいただく。 特に話すこともなく、やっぱり沈黙が流れる。 でも、苦じゃないのが不思議だった。 わざわざ自分が人と関わろうとするなんて、珍しい。 それも、ガキなんかに。 思い返してみれば、本当になんで自分はこの子と一緒にいるのだろう? そもそも、最初に誘った時は断られたのに。 そう思い始めると、どうしてこの子供が自分について来たかがよく解らなくなった。 「ねぇ、君。  何で、俺についてきたの?  初め、ヒトゴロシなんて嫌だって言ってたじゃない」 少年は眉間に皺を寄せて睨んできた。 「サスケ」 「は?」 「名前だ」 そう言われてやっと、名前を聞いてなかったことに気づく。 さらに、自分が名乗ってなかったことにやっと気づく。 「あ、ごめん!  俺は、カカシ」 サスケと名乗った子供は、フンと鼻を鳴した。 それから、また静かにホットミルクを一口飲みこんだ。 「アンタが人殺しをずっと続けてそうだったから。  所詮、ヒトゴロシはヒトゴロシだと思ったから…」 目線をカップから外し、感情のこもらぬ目で、声で淡々と答えられる。 その眼を逸らすことなく、疑問を口にした。 「それってさ、やっぱりサスケは人を殺したことがあるの?」 ピクリと身体が震えた。 まだ残っていたホットミルクが、カップの中で小さく跳ねた。 答えを訊くまでもなく、肯定だと解る。 「そっか…」 「…」 まだ、子供なのに。 なんて、言葉は持ち合わせていない。 だって、俺の最初の記憶なんて、人が死ぬトコから始まるんだよ。 しかも、俺が殺した。 まだ、俺は子供だったけど、俺が殺した。 人を殺すのに、子供だとか、大人だとか、そんなのは関係がない。 そんなことは、自分が一番知っている。
2003.05.12

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