山の奥深くに、ひっそりとした村がある。
村は、主に暗殺で生計を立てている。
そんな、血生臭い村で、お前の言ったように血生臭い職業をしてるんだよ。
そう言ったら、少年は目を逸らしたまま何も言わなかった。
ただ、汽車の窓から流れゆく景色を見ていた。
人殺しと少年 2
「よっ! 休暇は楽しめたか?」
村に入った途端に、アスマに声をかけられた。
「あぁ、それなりにね」
そぅ答える俺の横に、子供がいることに気づき、訝しげな顔をする。
「…お前の子か」
「…そんなワケないでしょ」
「だよな。で、何だ?」
「何が?」
「だから、その子供どうするつもりだ?」
「さぁ…?」
ホントにねぇ、どうすればいいんだろうね。
思わず連れてきたけど、ここは暗殺が生活の中心の村。
それだけが仕事ってワケじゃぁ、もちろんないけど…。
どうしようかねぇ。
答えに困っていると、少年が口を開いた。
「ヒトゴロシをするんだよ。
コイツや、アンタと同じように」
アスマの眼を逸らすことなく、真っ直ぐに見て言い放つ。
感情が一片も見えない口調で。
それに、アスマも俺も驚く。
アスマはこの村の出身でもない年端もいかないガキが、
言うセリフではなかったから驚いたのだろう。
でも、俺は違う。
「お前、人殺しの片棒は担がないって言ったじゃないか」
「あぁ、言ったな」
ガラス玉の眼が、何でもないことのように見つめ返してくる。
「なら、何でっ?!」
「…人殺しは辞めれないから」
さっきまでとは違い、視線を逸らして小さく呟いた。
アスマも、俺も、何も言えない。
言う言葉を、知らない。
その言葉が意味することを、解る部分があるから。
だから、沈黙だけがその場を支配した。
2003.05.12
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