それからまる3日間、サスケは眠り続けた。
やっと朦朧としてるとはいえ意識を取り戻した時、
彼は俺を見て笑い、再び眠りに落ちた。
消えゆく意識と共に、絶望的な言葉を残して。
「兄さん、何処にも行かないで…」
その場に居た誰もが凍りついた。
サスケの精神は、また壊れた。
誰もがそう思い、それは再び意識を取り戻したサスケの様子を見て明らかとなった。
サスケは意識を取り戻した後、
俺を『兄』だと言い、その他の者を一切拒絶した。
触れようとすれば、怯え俺の後ろに隠れようとする。
倒れる前に見せた写輪眼が、サスケの記憶に新たな改竄を加えた。
唯一、写輪眼を持つ俺を『兄』とし、
幸せだったころの思い出に縋りつく、酷く弱いサスケがいた。
父や母、一族の者たちがどうして見舞いに来ないかなど、サスケには関係なかった。
不思議に思わないようで、何もそのことについては触れてこなかった。
ただ、兄が要ればそれだけで、よかったのだろう。
記憶の改竄――精神の崩壊以外、サスケの体は健康を取り戻すと、
病院を退院させられた。
医者も看護婦も彼に触れることは出来なかったから。
俺、いや、『兄』だけをサスケは必要とし、その他を寄せ付けなかったから。
それに手を焼いていた病院側と里の上層部が結託して出した答えは、
考えるまでもなく、至極当然のことだったと言える。
両者は、俺にサスケを押し付けた。
それから数ヶ月、サスケは俺と一緒に俺の家で暮らしている。
精神が脆くなっているサスケをうちは屋敷に住まわすのは、憚られたから。
当初サスケは、家に帰らないのか、と訊いてきたが、
二人だけで暮らすのは嫌か、と訊いたところ、
首を思いっきり振って、嫌じゃない、と嬉しそうに笑った。
それを見て、胸が痛んだ。
お前にとって、俺は一体何だったんだろうな。
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