サスケがイタチとのあの再開を果し、
漸く目を覚ました時には、記憶を一部失っていた。


自分が、『うちはサスケ』であることは覚えている。
けれど、彼は『12歳のうちはサスケ』ではなかった。
あの惨劇が起こる前の、まだ幼い頃のサスケだった。


目が覚めてからの第一声は、
『兄さんは?』というものだったらしい。
それで、異変を感じた医者たちがあれこれ検査した結果。
精神的に堪えられない苦痛のせいで、記憶を改竄したということだった。
つまり、サスケは精神を病んだ。
壊れて、しまった。


子どもに戻ってしまったサスケは、
いつも、家族は、一族は何処にいるのか、と訊いていたらしい。
それに対して、当初は記憶を早く呼び戻すためにも本当の話をしたらしいのだが、
そうするとサスケは拒絶反応を起こし、
酷い頭痛と吐き気を催し泣き叫んだ挙句、ぱたりと意識を失う。
そのまま何日も寝込み、目覚めた時には、また訊くのだ。
「兄さんは?」と。


数回それを繰り返した結果。
医者は匙を投げ、それと同時に、
次の火影を決めなければならないことや、里の復興で手が一杯だった上層部も、諦めた。



サスケは、精神病棟に入れられた。
ベッドと小さな鉄格子つきの窓しかない、簡素な部屋にいた。
子どもに戻ってしまったサスケは、初めその環境に慣れなかったらしい。
兄を、母を求め、泣いたと聞く。
けれど、医者の言葉を聞いて、大人しく過ごすようになったらしい。
「みんなは任務に行ってるだけだよ。
 君がいい子にしてたら、すぐにでも帰ってくるよ」
と苦し紛れに医者が吐いた言葉を、サスケは信じた。



それから俺が回復し、サスケのことを聞き駆けつけるまでの間、
そこでサスケはひとりで過ごした。






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