だから、あの時言ったんだ。
俺は、止めろ、と。







Who is loved?







今日こそは絶対に来る、と思っていたケンタウルスホイミ。
それなのに、結果は無残なモノだった。
おかげで数か月分の隊員の給料も俺の全財産も消えうせ、果ては艦隊まで差し押さえの状態だ。

流石にヤバイと思い金をせびりに本部へと戻れば、何とも重い雰囲気が流れている。
何かあったか?、とは思うものの、本部からそういった連絡は受けていない。
それどころか先日受けた定期連絡の際には、揉めていた国と和解が成立したと聞いたばかりだ。

訝しく思いながらも秘書ふたりが止めるのを無視し総帥室の扉を開き、絶句した。
本部内の陰鬱とした雰囲気の原因はコイツだ。





「…誰も入れるなと言っていたんだがな。
 アンタには、そんな言葉を通用しないか」

口を歪ませシンタローが笑う。
それは、見たこともない笑い方。

「…お前、何て顔してるんだよ。
 何かあったのか?」

その言葉に、シンタローはまた笑う。

「別に何もねぇよ。
 それより、また金でもせびりにきたのかよ?」

嘲笑とも自嘲ともつかぬ笑みを浮かべ問われる。



「…まあな。
 どうせ貸してくれないんだろうがな」

「解ってんじゃねぇか。
 アンタに貸す金なんてねぇよ。
 さっさと帰れよ」

言いながら気だるげに、追い払おうと手を振られる。

「そうかよ。
 言われなくても、さっさと帰るぜ」

背を向け足早に、扉に向かう。
早く兄貴のところに行かなければ。
金を貸してもらうのはもちろんのこと、シンタローのあの様子の原因も聞かなければ。

扉に手をかけた一刻も早く出ようとするが、シンタローがそれを呼び止める。





「金、貸してやろうか?」

歪んだ声が呼び止める。
振り向けば、変わらず歪んだ笑みでシンタローが笑っている。

「アンタが俺の質問に答えてくれるなら、アンタが望むだけの金をやるよ。
 団の金じゃなく、俺の金で」

「…何が知りたい?」


そう言いながらも、何を問われるか解った気がした。
団の金ではなく、個人的に支払うと言う。

それは個人的な質問だから。
そして、シンタローのこの様子。
符号があった。

見つめ返せばその予想が間違っていないことでも言うように、シンタローが口を開いた。

「マジックとジャンの過去について――
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