再会は突然で、
時間が経ちほとほりが冷めた頃、男は団へやって来た。





Grudge.





「入団したいんですけど?」

無邪気な笑みの中、
それに邪気が見えるのは昔の遺恨のせいか。

「したければ、勝手にすればいい。
 それに、私はもう総帥じゃない。
 そういうことは、シンタローに言いなさい」

「あれ?
 喜んでくれないんですか?
 私のこともう好きじゃないんですか?」

昔と変らず、立場を無視した言葉。
そして、変らない小馬鹿にした笑み。


「無駄に長い年月を生きて来たんだ、
 同じくらい無駄に知識があるから役に立つだろう」

「…それ、答えになっていませんよ」

「そうかな?」

「そうですよ」

ニッコリと男が笑う。
昔と変らない顔で。

そんな顔から視線を逸らせば、窓辺に黄色い小鳥。
じっと見つめてくる無機質な目。

どうせ、高松が作った玩具だろう。



「ま、勝手にさせていただきますよ。
 どうせサービス大好きなシンタローなら、私の入団を許可してくれるだろうし。
 例え、あなたとの過去を知っていてもね」

言外にシンタローが、
私よりサービスを選んでいると含ます言葉。

それなのに、反論できない自分。

きっとその通りだから。
シンタローは、サービスが喜ぶならと、
私と男の過去を知っていたとしても、入団させるだろう。






「マジック様、幸せですか?」

小馬鹿にした笑みが消え、どこか切なげに聞かれた。

「幸せだよ」

だから今までとは違い、穏やかに答えた。
それなのに。

「本当に?」

そう問う時には、またあの笑み。
人を馬鹿にした、私が嫌いな笑み。


「どうして?」

「別に、聞いてみたかっただけですよ?」

ニッコリとまた、笑う。
悪魔がいるなら、きっとこんな笑みをするのだろう。

「お前は、私が不幸だったほうがよかったの?」

「…さぁ、どうでしょう?」 
 
クスクスと、悪魔がまた笑う。
その真意は、何か。



私が不幸なら、男は幸せなのか。
私がまだ男を好きだったなら、男はよかったのか。

男は、まだ私に苦しんでいて欲しかったのか。


悪魔は本心を見せないまま、ただクスクスと笑いながら出て行った。
向かう先は、彼の心にずっと住まう相手。

そこでは、きっと彼はこんな笑い方をしない。
幸せそうに笑うだけ。



窓辺を見れば、もう黄色い小鳥はいなかった。
あの小鳥は、主に何を伝えるのだろうか。

知ったところで何の変りもないけれど、
現実逃避のようにもう小鳥のいない窓の外を見続けた。

青い空が、哀しかった。
シンタローに会いたいと、切に思った。






06.03.22〜05.21 Back   Side.J