「あの日のことを忘れたとは、言わせないから」


血に汚れた手で、サスケの頬に触れる。
サスケは、目を逸らせない。
怯える目で、見つめ返してくる。
そんなに怯えても無駄だよ。

だって、もう逃がさないから――






Because… 〜a Possessor love〜 Side K







サスケが俺に近づいたのは、写輪眼を持っていたことと、
暗部に属していたという事実を知ったから。
兄貴の情報をより多く持ってそうだと踏んだのだろう。
大人ぶっていてもまだ子どもなサスケは、隠し事が下手だった。





「なぁ、アンタ。
 俺と寝ない?」
	
任務が終わりナルトとサクラが帰った後、サスケはゆっくり俺に近づいてきて言った。
恥ずかしがる風でもなく、挑戦的に笑って。

サスケが、夜毎に兄貴の情報を得るために、
いろんな処に出向いていることも、そこでやっている行為も知っていた。
けれど、興味がなかったし、信じてもいなかった。
今の今までは。


挑戦的に笑っているのに、僅かな媚が見える笑顔。
何故か、それにムカついた。




「寝ないね」

これくらいで諦めるはずないと解っていたから、殊更冷たく言い放つ。
思っていた通り、サスケは諦めることもなく、さらに笑って言ってくる。


「なんで?
 俺、上手いって言われるぜ?」

「女に困ってるワケでもなければ、ペドでもないから」

「たまには、趣向変えてみたら?」


予想通りに、食い下がるサスケ。
兄貴に関することだから当然かもしれないが、いいかげん嫌になってくる。


「しつこいなー。
 俺は、そんな趣味ないの!
 ヤりたいなら、他の男捜せば?」

今まで挑戦的だった顔が、見慣れた無表情に変わる。

「他の奴じゃ意味がないんだよ」

「何で?」

解っていて口にする。
だって、俺以外にお前の兄貴に関する情報と、
写輪眼のことを知ってる都合のいい奴なんていないもんな。

サスケは何て答えるだろう。
たぶん、サスケは俺が、誘われる理由に気づいてないと思っているし、
気づいてもらっちゃ困ると思っているはず。
そうじゃなきゃ、意味がない。




「好きだから」

サスケは無表情のまま言いやがった。

「は?」

「アンタが好きだから、って言ってるんだよ」

顔色ひとつ変えないで言われたその言葉に、何故か心底ムカついた。




「あっそ。
 じゃ、契約しようか」

「契約?」

「そぅ、サスケは俺のこと好きなんだよね?」

「あぁ」

「だったら、俺以外のヤツに興味はないよね」

「…あぁ」

僅かに間があいた返答に苛つく。

「だよね。
 だったら、他のヤツと寝るなんてことはもちろんないよね」

サスケの顔色が変わった。
一瞬で、元の無表情に戻ったけれど、動揺が見えた。
眉間に皺を寄せ、何処まで俺が知っているか思案する。
けれど、それもほんの数秒で、ゆっくりと目を閉じ、
再び目を開けたときには不敵な笑顔があった。

「あぁ、もちろんないぜ」

「そ?
 もし契約破ったら、俺何するか解らないけどいいの?」

「…あぁ」

数秒の間に何を考え、結論付けたか知らないけれど、
他のヤツと寝ないという契約をしたサスケにムカついた。
できもしないことを契約する浅はかなガキに、怒りを通り越して、蔑みを感じた。






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