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「…ごめん」 呟いても、きっとアルには届かない。 それでも、謝罪の言葉は漏れ出る。 一体、誰に許しを乞うているというのか…。 Egoistic love 2. アルの身体に取り付けられた生命維持装置に手を伸ばす。 これを引き抜いて、後を追えばすべてが終わる。 「…ごめんな」 装置を作ったのは、こんな日が来るためなんかじゃない。 アルの意識が取り戻されるのを待つためだった。 けれどその日が来る前に、俺を蝕む暗い侵食が完全に進んでしまった。 「ごめん」 すぐに俺も行くから…。 管を引き抜くために、手を伸ばす。 けれど、それは彼の声によって阻まれた。 「君だけ楽になるつもりかね?」 振り返れば暗闇の中、彼が入り口に佇んでいる。 「その管を引き抜いて弟を殺して、君も死んで終わりかい?」 静かに彼の声が責める。 「死んだところで会えないよ。 君だってそれは解っているだろう。 死ねば何もかもが終わるだけだ。 そこから先は、何もない。 死後の世界など有り得ないのだから、君は弟を永遠に手放すことになる。 それでも、その手を伸ばすのか?」 管へと伸ばしていた手を下ろす。 死後の世界などないことを知っている。 死ねば終わりだと知っている。 アルを永遠に手放すことになることも解っている。 でも、それでも、侵食は止まらないんだ。 もう僅かな理性しか残っていない。 いや、この判断をしている時点で、もう侵食され尽くしたのかもしれない。 だって…僅かな未来にかけられるほど、もう強くはないんだ。 再び手を管へと伸ばした。 管へと触れる。 これを引き抜けば、アルの肉体は間もなく死ぬ。 すぐ後を追うから。 ごめん、アル。← Back Next →