自分では、決められない。
だから、相手に委ねる。
そんなにも、俺たちは弱い…。
我侭な雨
梅雨のせいか、今日も雨が降る。
しとしとと静かな音をたてて、雨が降る。
隣を見れば、シーツにくるまったままベッドに座り、
外を睨むように見るサスケがいる。
「やっぱり、雨止まなかったな」
「うん、まぁ梅雨だしね。
だから、今日の任務はお休みだね」
今日の任務は、雨天中止のモノだった。
どこぞのお屋敷の草刈り。
依頼主もさほど重要視していないためか、雨が降ったら延期でいいというモノだった。
どこからが、『雨』というのか知らないけれど、
静かにとはいえ、絶え間なく降る様子は誰が見ても『雨』だと判断するだろう。
だから、ナルトにもサクラにも連絡はしてない。
彼らも任務が中止だと言うことは、解るだろう。
たかだが、雨で中止になるような任務。
自分がまだそんな生ぬるい任務にしかつけていないことに、
焦りと苛立ちを感じてか、サスケは自分の親指を強く噛む。
僅かに滲む血が痛々しい。
「噛むなよ」
そう言いながら寝ていた身体を起こし、
サスケの親指をその口から離し、自分の口元に持っていく。
舌先に鉄くさい味が広がる。
サスケは何も言わず、ぼんやりと自分の指と俺の口元を見ている。
いつもだったら、絶対にこんなことをすれば顔を真っ赤にして怒るのに、
今日は何故か怒らない。
それどころか、手を振り払いもしない。
「振り払わないの?」
そう言うと、サスケはゆっくり視線をあげた。
そして、それは自分のそれと交差する。
視線が、ぶつかる。
それは、見つめあうというような甘いモノでもなければ、
睨みあうという強いモノでもなかった。
ただ、視線がぶつかっていた。
けれど、何故だかそれが苦痛になりかけて、
逸らそうかと思ったら、サスケが笑った。
それは、見たことがないくらいきれいに。
でも、どこか寂しそうに。
そして、
「離せよ、バーカ」
と言って手を、振り払われた。
「あ…」
自分で出した声に、驚いた。
何が、『あ…』なのだろう。
さっきまで当然されると思っていた行為が、少し遅れてされただけなのに。
何を驚いたというのだろう。
そして、その瞬間、自分は何を思ったのだろう。
けれど、サスケはもぅ俺なんかを見ていなかった。
また、窓の外を見ている。
静かに降る雨を見ている。
ただ、先ほどと違い、睨みながらではなく、ぼんやりと見ていた。
その姿が何処か寂しげで、思わず手を伸ばした。
けれど、サスケに触れることなく、その手を静かに下ろす。
触れたところで、どうすればいいか解らなかったから。
無意識でも気配はたっていため、サスケは今の行為ににたぶん気づいてない。
それが、せめてもの救いだった。
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