何処か遠いところに――

「何処か、遠くに行こうか」 微苦笑を浮かべ、カカシが言った。 「何処へ?」 「んー、遠いところ」 「日が沈む」 西の空を除いて、空は濃紺へと変化している。 星も僅かながらにも、瞬いている。 こんな時間に何処へ行こうというのか。 「何処へ?」 「遠いところ」 変わらず微苦笑を浮かべ、カカシは答える。 「サスケが行かないなら、ひとりで行ってくる」 それだけ言って、本当にカカシは背を向け歩き出す。 振り返ることなく、その背中は徐々に遠くなり消えた。 湧き上がる焦燥感。 駆け出す足。 「カカシ」 叫ぶように名を呼べば、カカシはゆっくりと振り返る。 「何?」 「いや…」 ただ、呼び止めねば、と思っただけだ。 置いていかれる、そう直感が告げてきた。 里を抜ける、という愚かなことはしないと解っていながらも、 危うい何かを感じる胸のうち。 そんな俺の想いに気づかないのか、静かにカカシは訊いてくる。 「一緒に、行く?」 「あぁ」 何処へ、とはもう訊かなかった。 ―――訊けなかった。
04.06.17
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