「『愛してる』って言ったらどうする?」
冗談で訊いてみた。
本気だったけど、それに気づいたらアンタは俺を捨てるから。
だから、自分に冗談だと思いこませて訊いた。
本気?
「何それ?本気?」
クスクスとアンタは笑ってるけど、一瞬目が笑ってなかったよ。
ねぇ、気づいてないだろ?
「まさか? 訊いただけだよ」
クスクスとアンタと一緒になって笑う。
冗談だとアンタが信じやすいように。
「だよねー。よかった。本気だったら――…」
言葉が途切れたとたんに、温度が下がった気がした。
さっきまでのまどろんだ甘い雰囲気がいっきにかき消える。
アンタは笑うのをやめて、じっと俺を見る。
沈黙が痛い。
訊きたくないけど、気がつけば訊いていた。
「…本気だったら?」
お互いに目を逸らさない。
逸らせない。
アンタは俺の言葉が本気か冗談かを見極めるために、
俺はアンタの続きが気になることと、本気だとバレないようにするために。
一瞬とも永遠ともいえる間があった。
「そうだね。本気だったら…殺すよ」
そう綺麗な笑顔で言われた。
一瞬間があき、ふたりして吹きだした。
そして、またさっきまでのまどろんだ甘い世界に戻ってゆく。
クスクス クスクス笑いあう。
身体はアンタの温もりを求めて、さらに寄り添っていく。
ねぇ、本気だっただろ?
『殺すよ』って言葉、本気で言っただろ。
それ、逆効果だよ。
俺は、アンタに捨てられるのが怖かっただけ。
アンタに「要らない」って言われるのが怖かっただけ。
でも、アンタに殺されるのは全然かまわない。
アンタの手にかけられるなら、それは全然かまわないんだ。
カカシは、『本気』の気持ちはいらない。
それは『本気』ってものが怖かったり、それに付属するであろう裏切りが許せないんだと思う。
そんな妄想。
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