意外なのは、自分の反応。 お人好しではなかった筈なのに。 アゲハ蝶 二人がけのソファにかけた俺の横で、ガキが眠っている。 穏やかになんて勿論なく、眠っていると言うよりは意識を失っている。 あの後ガキは、 ギラつく目で見上げてくるものだから、ちょっと叩きのめしてやった。 それから小汚いままで家に置くつもりもないから風呂に入れてやろうと、 意識を失った体を抱き上げれば、異常な軽さに驚く。 そして再び意図せず脇差に触れた時、 ガキは意識を失っているというのに、僅かに反応した。 何、その面白い反応? この刀に何かあるって言うの? それなりにいい刀ではあると見て取れるが、 後生大事にするような名刀では決して有り得ない。 それなのに、何その反応? やっぱ面白いわ、このガキ。 風呂に入れてもガキは、意識を取り戻さなかった。 ベッドに寝かしてやるほど親切ではないが、 その辺に捨てる気は既に失せているからソファに寝かした。 ついでとばかりに刀を傍に置いてやれば、 ガキは無意識の中でそれを大事そうにギュッと抱きしめる。 ガキが見せた初めてのガキらしい様子。 でもちょっと、ガキすぎねェ? とか思いつつ、そこでやっと我に返る。 メシ、喰ってねェ。 糖分も取ってねェ。 暫く留守にしてたから、冷蔵庫の中は碌なモノがない。 いや、待て。 この前買ったチョコ、まだ残ってんじゃねェか? うん、確かまだ喰ってない。 あれ喰おう。 いそいそとキッチンに向かおうとしたら、腰の辺りに違和感を感じで振り返る。 振り返った先に、ガキの白くて小さな手がシャツの裾を掴んでいた。 おいおい、何デスかー。 ちょっと、そこまでガキって歳じゃないでしょ。 そう思うのに、振りほどく気にはなれなくて、 結局、何してんだか、と思いながらも空いたスペースに座り込んだ。 そして数分後、予想より遅く神楽の登場。 昨日みたいに時間帯無視して玄関前で騒がれるのも嫌だが、 我が物顔で当然の如く鍵をぶっ壊して入ってくるのは止めてクダサイ。 せめて、今まで壊した鍵の代金払いやがれ。 言いたいことはいろいろあるけれど、 どれを言ってもこの状況では説得力はなく、 目の前で勝ち誇った顔で笑う神楽を見て溜息を吐き出した。
05.09.15 ← Back