07.10.03

覚書。5年後。山本と同僚会話。 / .   
信じられないモノを見た。
思わず、咥えていた煙草を落としそうになった。





「…アレ、誰?」

運転してた同僚に訊けば、あっさりと答えが返ってきた。

「どれだよ?
 …あぁ、アレか。
 ホテル王兼、裏ではうちとも取引のある武器商人」

表でも裏でも儲けまくりだぜ、と悪態を吐かれる。

「…人柄は?」

「はぁ?
 お前そんなこと訊いてどうすんだよ?
 まぁ、それなりに紳士って訊くけど、紳士つっても武器商人だしなー。
 ってマフィアやってる俺らがとやかく言えることじゃねぇけどな」

それより会ったことなくても取引相手くらい覚えろよ、と言われても関係ない。





ただ、先ほど見た現実が信じられない。

高級ホテルから出てきた40歳前後の男。
その隣に、ヒバリがいた。

男はヒバリの腰に手をやり、紳士的な笑顔を向ける。
それに対して、少し照れたようにはにかんだように笑うヒバリ。

知り合ってから5年以上も経つのに、そんな顔は見たことがなかった。


タクシーに乗せられ、
ヒバリは窓から顔を出し、男が近づきキスをした。


なぁ、有り得なさすぎて信じられねぇんだけど。
それでも、見たことが現実だと解っている。



嘘だろ、と逃避の思いで呟けば、
次の接待相手はアイツだぜ、と隣で笑う男の声が聴こえた。




***

ファザコンなヒバリもいいんではないかと。
思ったけど、絶対に書けないだろうと思うので、
発散する思いを込めての覚書。 
 



07.09.16 覚書。山ヒバ。高校以上。 / . 触れる。 温かい。 くっつく。 抱きつく。 それから肩が震え、笑われたと知る。 それでも抱きつくのを止めない。 「楽しい?」 首を捻り男が問うが、無視する。 首を戻し、そこに後ろから腕を絡める。 僅かな汗と男の匂いがした。 そこに顔を埋める。 性的な意味などなく、ただこの温度が欲しかった。 この男が発する温度だけが欲しかった。 それが悔しく、腕に力を込める。 ぐぇっと潰れたような声が聴こえて、 それからまた男は振り返り笑いかける。 「欲しいか?」 問うてくる目は真剣で、 答える僕も真剣に答えたとすれば、 欲しい、の一言に尽きる。 それでも男が言っている意味では欲しくない。 性的な意味でなど、欲しくない。 ただこの温もりが欲しいだけ。 だから、また首を元の位置に戻す。 「狡いよな、ヒバリは」 男が笑う気配がしたが、どうでもよかった。 狡かろうが何だろうが、欲しいのはこの男が発する温度だけだった。 *** 唐突に。 時間潰しにYUIの『LOVE & TRUTH』聴きながら。
07.08.23 覚書。「Colorless」で山本と獄寺会話。 / . あぁ、何だろうな。 こういうの、笑うしかない状況って言うヤツなんかな。 「……にな」 「あ?」 呟いた言葉がかすかに聞こえたのか、不機嫌丸出しで獄寺が振り返る。 何も正直に答えてやらなくてもいい。 でも、何だろうな。 聞いて欲しかったのかもしれない。 だから、口を開いた。 「願ったことだったのにな、って言ったんだよ」 仕事の書類山積みの状況で、 いきなりそんな言葉を言われても内容を理解することなんて難しい。 しかも、何の脈絡のないことなら尚更に。 「あ?」 更に不機嫌になっても訊いてくるのは、抱えている問題の大きさ故に。 けれど、俺が言っている内容は関係のないこと。 ある意味、 全くではないけれど、それでも根本は違うはず。 「あの頃さ、  正直言うと、ヒバリを閉じ込めておきたいって思ってたんだ」 笑えるだろ?、と笑ったところで、 獄寺は笑うはずもなく、ただ深く眉間に皺を刻んだ。 「…夢が叶ってよかったじゃねぇか」 やってられない、とでも言うように、 もう見向きもせず書類の山へと没頭を始められる。 必死なその背中に、また声をかける。 「夢は夢のままのが、よかったよ」 それに、そんなことできるはずがないと思ってた。 だからこそ、願ったことだった。 叶うモノなど、夢なんて言わない。 *** …あれ? 書きたいモノとは違う方向に走り出したよ? ってことで、「Colorless」の覚書。 獄寺との再会をヒバリさんが果たしてないので、 次回は獄寺との再会話を、って思ったんだけど、 この調子だと、山本と獄寺の会話のみになりそうな…。
07.08.21 覚書。10年後くらい。山ヒバ。 / . 「何様のつもり?」 なんて訊くから、 オレ様?、と答えれば、ニッコリ笑顔で殴られた。 避けれるそれは避けずに受け止めて、それでも更に笑ってやる。 「恋人のつもり、なんて答えないだけ感謝しろよ?」 加えて付け足せば、 先ほどのなんて比ではない速さでトンファーが降りかかってきた。 それを微動だにせず受け止めて、 口の端が切れて滲む鉄の味さえも気にせずに、 笑みなんか完全に消し去って睨みつけてくる目を見て言った。 ――感謝しろよと、もう一度。 だって、そうだろ? お前は、本気の感情なんて欲しくないんだろ? そんなの貰ったら受け止めきれず、壊れてしまうもんな? だから、そんな言葉は言ってやらない。 *** …10年後くらい? 他の誰が本気の感情を向けようが、我関せず、のくせに、 山本の本気の感情だけは、自分の根底を揺るがしそうだから完全否定するヒバリ。
07.08.19 覚書。10年後山ヒバ。 / . 「…何してるの?」 「んー、抱きしめてんの?」 向き合って座り込んで抱きしめてる。 そんなのされてる本人が解ってるだろうに訊いてくるのは、不本意だからか。 「それだけ?」 「そ。それだけー」 「…じゃ、帰るよ」 「ダメー」 「…帰る」 「…ダメっつったろ?  行かせねぇよ」 「…」 「…なぁ」 「何?」 「…やっぱ、何でもねぇ」 そう言って、更にキツく抱きしめた。 縋るように、抱きしめた。 ――金でなんとかできるんならよかったのに。 飲み込んだ言葉は、それだった。 *** 10年後あたり。
07.08.17 覚書。ツナと山本会話。中学。 / . 「山本って、マゾ?」 「…は?  いきなり何言い出すんだ?」 「答えてよ」 「…どうしたんだよ?  まぁ、マゾじゃねぇよ」 「だよね。  どっちかって言うと、Sだもんね」 …さりげに酷いこと言ってくれちゃうのね。 「…そうでもねぇけどな」 「じゃ、何で?」 「何が?」 「解ってて訊くあたり、サドっ気あるよね」 「…だからー、ツナ、何なんだよ」 「何でって訊いてるんだよ」 「…答える必要性は?」 「ないね」 「だったら、訊くなよ」 「これでも、半年は訊くの我慢したんだけど?」 「それでも必要性ないだろ?」 「…心配だから」 「…半年も我慢してくれてたんだろ?  だったら、解るよな?  これが、見た目ほど酷い怪我じゃないってこと」 「…何で」 「ツナ、これはお前には関係ない」 *** かわすのではなく、 ヒバリの暴力?を受け止める山本と、 それが見るに耐えなくなったツナと、ヒバリの葛藤。
07.07.26 覚書。大学生、ヒバリ。獄寺。山本? / . 下らないママゴトじみたことを終りにするのは、僕だと思っていた。 それなのに、 提案し、勝手に行動に移した男が終らせた。 それも僕に一言もなく、突然に。 1LDKの部屋には、ただでさえ物が少なかったと言うのに、 男の物がひとつ残らず消え、僕の僅かな物が残るのみ。 狭いとも広いとも思わなかった部屋が、やけに広く感じた。 「…訊かねぇのか?」 男がいなくなって一ヶ月。 僕は探すことなく、ただ日々を過ごす。 そんな中、痺れを切らしたのか、 普段は顔を合わせたところであからさまに視線を逸らす獄寺が、僕に声をかけてきた。 男と今の僕との唯一の共通点と言えば、この男なのかもしれない。 日本で一番難関だと言われる大学に、学部は違うとは言え在籍しているのだから。 時折顔を見かけたことはあっても、 話しかけてくることなどなかったのに、 こんな時だけ話しかけてくるその似合わない人の良さ。 男とは大違い。 粋がっているくせに根は素直であろう獄寺。 逆に、人当たりがいい笑顔を振りまいておきながら、 決して心の奥深くには人を入れない男。 そんな男の気まぐれな行動が、同居だった。 だから、突然いなくなろうがどうでもいい。 どうせ気まぐれだったのだ。 気にするまでもなく、見えていた結果。 それが思ったよりも二年と長く続いていただけのこと。 「訊く必要なんてないだろ?」 だから、思ったまでを口にしたというのに、 獄寺は酷く怒り、口汚く僕を罵って席を立った。 残された僕は、通行人の無遠慮な視線に晒され、 いつもなら気にしないそれに、睨みを効かせることになった。 なんて、無駄な行動。
07.07.24 覚書。山本:中3。ヒバリ:高1。山ヒバ? / . ヒバリ、と声にならない呟きが漏れた。 聴こえるはずもない距離だったのに、 ふっとヒバリが顔を上げ、目が合った。 合って、しまった。 何で、こんな所に。 しかも、こんな時間に。 ぐるぐると回る思考は解決の糸口を見つけることなく霧散し、 ただ目に映るヒバリだけを脳に刻み付ける。 1年ぶりに見るヒバリ。 もう学ランを着ていない。 進学校と名高い高校のブレザーを着ている。 呆然と見る俺に、 ヒバリは興味なさそうに人ごみに消えた。 くいっと服を引っ張られ、漸く気づく存在。 視線を下げれば、小柄ながらも素敵な身体の持ち主が不満げな顔をしている。 どうしたの、と口を尖らせ文句を言う女に、 何でもない、と笑ってキスを落とせば、 ご満悦気分で、絡めていた腕に更に身体を寄せて女は笑った。 明らかに商売女と解る女に腕を絡められ、その細腰を抱き、 明らかにその女のマンションと思しき高級マンションエントランス前で、 これから女を抱きます、と言った状態を見て、ヒバリは何を思っただろう。 と思ったところで、何も思わない、が答えでしかない。 一切、表情を変えなかった。 それどころか、興味がないと解る態度。 胸が痛い。 どうしようもないほどに痛い。 それなのに、 俺は笑って下らない言葉を吐き出しながら、女の細い腰を抱き部屋へと向かった。 *** 突発に。 遊んでる山本もいいんではないかと。 うまく書けなかったけれど、動機はただそれだけ。
07.07.10 覚書。10年後。山ヒバ前提、ヒバリと毒蠍。 / . 近づいてくる気配。 薄く開けられたドア。 僕を抱きしめ、 粘着質な視線で見る男は気づかないけれど、 気づいていた僕はそれを放っておいた。 執拗に口内を嘗め回した男は、 下らない言葉を僕の耳に残し部屋を出た。 その際に、 ドアの外に居た人物に驚いてはいたけれど、そんなことはどうでもいい。 「何をしているの?」 そう訊いて来たのは、毒蠍。 嫌悪感のせいか、眉間には皺が寄っている。 「君と同じこと」 答えれば、ますます眉間に皺が寄せられる。 「どういう意味?」 「愛人、って意味」 さらに問われる言葉に、薄く笑った。 「…どっちが、と訊いていいかしら?」 一瞬の沈黙の後、溜息を吐き出しながら訊かれる。 嫌悪を顕わにしていた顔は、諦めたものへと変わった。 「言ったろ?  君と同じだって」 言外に、 自分がと言えば、女は目を見開く。 その顔に笑う。 「…あんな男の?」 そう問う声は、再び嫌悪感を顕わにした顔。 「そう、あんな男の」 気配にも音にも気づかないマフィアとして最悪な、 それでいて、無駄に権力だけは持っていて、 キレイなモノが好きだと粘着質な目で見てくる、そんな男。 *** 山ヒバ前提ですよ。 てか、それなりの関係の上で、 ヒバリがどっかの誰かの愛人してればいい。 当然の如く、 そこには愛情なんて欠片もないどころか、 気持ち悪いと思っていれば、それはそれで楽しいんではないかと。
06.08. Back