「好きだ」

嘘偽りなく本気で言ったら、殴ることもせず、
ヒバリは悠然とソファにもたれたままで笑った。





月人

「欲しいモノがあるんだけど」 「何?」 ヒバリが何かを欲しいと思うことなど想像できないけれど、 それでも欲しいモノがあると言うのなら、例えどんなモノでも手に入れようと思った。 「仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の裘、龍の首の珠、燕の子安貝」 「…それ何?」 聞いたこともないモノを並びたてられる。 「知らないの?  まぁ、いいけどね。  僕を好きだと言うのなら、それくらいのモノを用意してから出直しなよ」 じゃあね、と笑ってヒバリは出て行った。 残された俺はすぐにネットで調べ、それが何かを知った。 これは諦めろ、と言われたのか、 それとも本気でそれくらいのことをしろ、と言われたのか解らない。 それでも、俺はそれを手に入れようと必死にこれから駆け巡る。 それだけが、解っていること。 幻の品々を目の前にしたヒバリを想像すれば、楽しかった。
07.02.26 Back