そんな始まり。





地区予選突破は、当たり前。
誰もがそう思っていたのに、結果は3回戦敗退。

高校生活最後の甲子園の夢は絶たれ、
残ったのは無駄に長く感じられる夏休みと言う時間だけ。


部活の仲間は未だショックから立ち直れず、
他の友人達も、どう対応していいのか解らない、とでも言うように俺を見る。

別に、気にしちゃいねぇのに。
2回も優勝経験すれば、十分なんじゃね?

でも、そういうワケには行かないようで、
いろいろ面倒くさくなって、ちょっと離れようと思った。

この現状を知らないヤツらに会いたかった。




マフィアになると言って、
中学卒業と同時にイタリアに渡ったツナ。
そんなツナについて行った獄寺。

それから、高校卒業と同時に消えたヒバリ。
ツナんトコにいた小僧に、殺し屋としてスカウトされたらしい。

獄寺は兎も角、
ツナのマフィアにも驚いたけど、ヒバリの殺し屋って何だよ。

平和な日本じゃ、そんなの想像できねぇよ。




あぁ、でも、それでいいんだっけか。
こっちの現実を知らない、アイツらに会いたかった。

どこかで後悔すると知りつつ、電話を手に取った。
ツナと獄寺を見送りに行った空港で、小僧に渡された電話番号。

来たくなったら連絡しろ、と小僧は笑ったっけ?
あれも今思えば、一種のスカウトだったのかもしれない。




「夏休み、そっち行っていいか?」

問えば、小僧の笑う気配。

「もう、戻れねぇぞ?」

その言葉に答えることなく、明日行くから、とだけ告げた。





こっちの日常の崩壊と共に手に入れる、あちらの日常。
何のために、ツナたちが連絡を寄越さなかったか知らないワケでもないのに。

こんなことでもなければ、俺はこっち世界で死ぬまで生きていた。
何不自由なく、野球に夢見て、それで喰っていって。


でも、こんな切欠で変ってもいいんじゃね?







06.06.23 Back