――愛とは? 訊けば、 ビアンキは、与えるモノ、と慈悲深く笑って答えた。Love is ….
小僧の愛人を10年以上も続けてるビアンキの言葉には重みがある。 しかも、他に愛人が何人いるんだか解らない状態を思えば尚更だ。 でも。 「流石に、枯渇しねぇ?」 「まさか。 だって、無償の愛って言葉があるでしょ」 そう言って、ビアンキはいっそうキレイに笑った。 無償の愛ねぇ。 それって、親子間とかにだけ生じるんじゃねぇの? なんて思ってしまう俺のヒバリへの愛ってヤツは、 10年目にして枯渇へと向かっている。 だって、 愛情を向けたところで返ってくるのは、 絶対零度の視線か辛辣な言葉か無機質なトンファーが齎す痛みのみ。 それで10年も愛し続けたんだから、ある意味凄いんじゃないかとさえ思う始末。 やはり、これは愛故にだろう。 そんなワケで、本人に訊いてみた。 「愛とは?」 ヒバリは、思いっきり冷やかな視線で俺を見る。 それを気付かないふりで流し、 更に笑みを深めれば、どうやってしても俺が引かないと悟ったらしく、 溜息を吐きだしながら、知らないよ、と言った。 それはもう本当に、嘘でも何でもなく心底理解できない代物だとでも言うように。 …ちょっと、待て。 俺が散々、本当に散々(だって、10年もだ)言い続けてきたってのに、 言うに事欠いて、知らない、って何だよ。 今まで、お前、どんな気持ちで俺の言葉を聞いてきたんだ。 何も思わなかったのか? 沸き起こったのは、静かな怒りだった。 だから。 「よーし、ヒバリ。 覚えてろ。 俺が絶対に、お前に愛ってヤツを教えてやる」 ビシっと指さして言い放った。 ヒバリは嫌そうに俺を見たけれど、そんなの関係ない。 もう、決めたのだ。 10年経って、 枯渇へと向かっていった愛は、 何故か10年目にして、闘志へと変わった。 それでも、想いの向かう先はヒバリで変わらず、 ビアンキの言う無償の愛とは異なるけれど、 俺はどんなカタチであれ、この先ずっとヒバリを想い続けるのだろう。 だって、悔しいじゃねぇか。 俺の10年分の愛を、思い知れ。 でもって、 この先理解して、 少しでも返してくれればもっともっと愛すから。
09.02.25 ← Back