クリスマス。(パパ・秘書ズ)【05.12.25】 「クリスマスには何が欲しい?」 いつもと同じ問いかけに、 「何も」 と、いつもと同じ答えを返せば、 「じゃあ、休みくださいよ。 もちろん、ティラミスの分も」 と、隣でもまたいつもと同じ答えが返った。 その答えの結果、 いつもと同じようにマジック様は休暇をくれ、 いつもと同じようにチョコレートロマンスは私を連れ出した。
シンタローとティラ。【05.11.27】 「あなたは、どんな答えを望むんですか?」 自分で訊いたくせに、そんなの知らない。 どんな答えを望んでいるのかなんて、解らない。 答えに窮していると、 ガラス玉のような目が、 急かすでも責めるでもなく真っ直ぐに見つめてくる。 酷く、真っ直ぐに。 子供のような無邪気さはない、 射抜くような鋭利な強さもない、 感情さえも伺えない。 そんな、何処までも真っ直ぐな視線が怖い。 「…俺は」 答えなければ、 と思うのに、答えは出てきてはくれない。 そんな俺を笑うでもなく、やはりティラミスはじっと見ている。
後悔。(長男・三男)【05.10.29】 「…後悔するぞ」 絶対に、とハーレムがぐっと眉間に皺を寄せて言った。 「何を後悔する? するはずないなんてないだろう。 お前もサービスももう子供じゃない。 一族が何をやってきたのか知っている。 今更だろ? だから、後悔するはずなんてない」 それこそ、絶対に、だ。 そう言い切れば、 それでも納得できないようにハーレムは苦渋に満ちた声で何かを言った。 あの時ハーレムが、 何を言ったか解らなかったけれど、今ならそれが解る。 解ってしまった。 解りたくもなかった。 けれどそれを気づかせた存在は、 大切で、大切すぎて、この存在を否定することなどもうできないのだ。
長男・三男【05.10.14】 「兄貴ー、金貸して」 「帰れ」 「…いいじゃねぇか、少しくらい。 どうせ有り余ってんだろ?」 「この前、給料振り込んだばかりじゃないか」 「あんなのもう使ったっつーの」 「…何に使った?」 「ヒミツ」 「お前、自分の顔見て言葉を吐きなさい。 似合わないから」 「…兄貴は冷たいよな」 「お前も小さい時は可愛かったんだけどね」 「そう言やぁ、 ガキの頃、何でも買ってくれたよな? 何で今はダメなんだよ」 「だから、あの頃は可愛かったからね」 「ケチ」 「ケチじゃない」 「ショタコン」 「…断じて、違う」 「そうか? まぁ、昔は兎も角、今は息子一筋だもんな。 どっちにしても危ない野郎だけど」 「…ねぇ、お願いだから帰って?」 「んー? 金くれたらすぐにでも帰るぜ?」 「あげるから。 だから、さっさと帰りなさい」 「悪ぃな。 じゃ、有難く貰っとくわ」 「…お前は昔から、 欲しいモノを欲しいと言って我慢すること知らないよね?」 「…血筋だろ?」 「…そうかな?」 「そうだろ? …帰るわ。 金、貰ってくぜ」
欲しいモノ(マジ・ティラ)【05.10.11】 「好きだよ」 「そうですか」 「何それ? もっとこう喜んでくれないの?」 「…何故ですか?」 「だって。 お前、私を好きじゃないか?」 「でも、あなたは私を好きじゃないでしょう? それなのに、喜べというんですか?」 「何を言ってるの?好きだよ?」 「それは有難うございます。 でも。 残念ながら、それは私が望んでいる感情とは違いますから」 「…愛して欲しい?」 「…さぁ、どうでしょう」 「ティラミスは、ちゃんと欲しいモノは欲しいと言わなきゃダメだよ」 「言ったところで、手に入らないと知っていてもですか?」 「あぁ、それでも」 「申し訳ありません。 私はあなたと違って、強欲ではないので無理ですね」 「欲がないね」 「ありますよ。 あるから今の私があるんですよ」 「傍にいるだけで、とか?」 「…」 「やっぱり、お前は欲がないね」
欲しいモノ(マジシン)【05.09.08】 「欲しいモノはね、勝ち取らなきゃ」 「テメェのは勝ち取るんじゃねぇ、奪い取るんだろ? 踏みにじって、それで手に入れるんだろ?」 「…酷いね」 「酷い? 本当にそう思ってるなら、そんな顔しねぇよな」 「えー? パパ、どんな顔してる?」 「うっすら笑ってんじゃねぇよ」 「そんな顔してるかな?」 「…してるね」 「そうかなー? でもパパは、シンちゃんに関しては違うよね?」 「…」 「ね、シンちゃん?」 「…」 「シンちゃんはこういう時だけ黙るよね?」 「…ばいい」 「何?」 「…別に、何でもねぇ」 「そう?」
虫歯(4兄弟)【05.07.06】 「痛っ」 マジックお兄ちゃん、左奥歯に激痛が。 すかさず、次男。 「兄さん、どうしました?」 ずいっと顔を近づけて、 その勢いのままに頬をしっかり両手で挟んで麗しの顔を接近。 次男の美貌と態度に思春期(12歳くらい?)のお兄ちゃんドキドキ。 なので、うっかり頬を染めちゃって、 ますます知らず次男を喜ばせてしまう。 次男、真剣な顔で、 大丈夫ですか?、と心配しながら、 お兄ちゃんのことかわいーってうっとりしちゃう。 お兄ちゃん、ドキドキしながらお答え。 「歯が…」 「歯が?」 「ちょっと痛いかなーって思って…」 お兄ちゃん、 自分が弟たちにちゃんと歯を磨けって言ってるのに、 まっさきに自分が虫歯になっちゃって恥ずかしい…、 と視線逸らし気味になっちゃう。 そんな仕草さえも可愛く思えてならない次男、 両手で挟んでた頬をしっかり自分に向けさせて。 「見せてください」 と、更にずいっと顔を近づける。 キスされそうなその体勢にお兄ちゃん慌てて暴れるが、 ちゃっかり次男ガード。 ギャーギャー喚く長男と、嬉しそうに迫る?次男を横目に、席を立つ三男。 「歯磨きするぞ」 しっかりと四男の手を握って、丁寧な歯磨きをしに行く三男と、 しっかりと手を握られたまま頷いて席を立つ四男。
パパンズデイ(マジ・ティラ)【05.06.19】 「…今日は父の日だよ?」 渡されたネクタイを困惑しながらも受け取りパパが言う。 「知ってます」 さらりとティラはお答え。 それはもう表情すら変えず、だからどうした?、とでも言うように。 「…えぇっと、誕生日なら兎も角、父の日だよ?」 パパはどうにも納得いかない。 「えぇ」 でもやっぱり、何事もないようにティラはお答え。 「…」 困惑するパパをおいて、ティラはさっさと踵を返す。
太陽と月。(マジシン)【05.05.16】 「太陽だよ」 唐突にマジックが言った。 アホ極まりない笑顔でなんかじゃなく、俯きぎみに。 「…何だそれ?」 「だからね。 シンちゃんは、パパにとって太陽ってことだよ」 そんなこと言われても、嬉しくないデス。 しかも、そんな暗い顔で言われて喜ぶヤツなんていません。 あまりに下らないことを言われて、 思わず鳥肌が立ちそうになったけれど、それより先に溜息が出た。 何故か、可哀想に思えてしまった。
嘘でもいいから。(マジシン)【05.04.25】 「嘘でもいいから、好きって言ってよ」 「誰が言うかよ。 てか、俺はアンタのことなんざ好きじゃねぇ」 「酷いよ、シンちゃん。 パパは、こんなにシンちゃんを愛してるのに」 そう言って、マジックはクスクスと笑った。 自分は愛していると言うくせに、俺に望むのは好きという言葉。 それも、嘘でもいいと言う。 だから、信じられないんだ。 馬鹿にされているとさえ思う。 同等のモノを望まない理由は何だ?
ティラミスの涙。【05.03.09】 「…ティラミス?」 何か信じられないものを見たかのように、 マジック様が呆然と名を呼んだ。 「どうかされましたか?」 「いや、私ではなくてお前が…」 目を瞠ったままにそう告げられても、解らない。 黙って先を促せば、変らず呆然とした声で答えてくれた。 「…泣いているよ?」 信じられないことを言われた。 けれどそれが嘘だとは到底思えなくて、 頬に手を伸ばせば濡れた感触。 「…あぁ、涙が流れただけですね」 事実を事実のままに伝えた。 その瞬間、マジック様の眉間に皺がよる。 目の前で泣くなどと恥ずべき行為をしたことに、 自分に僅かな苛立ちを感じてしまった。 すぐさま謝罪しようと口を開くが、それは叶わなかった。 「泣いてもいいんだよ」 何を言われたのか、解らない。 マジック様はもう眉間に皺をよせてはいなかったけれど、 どこか辛そうな顔をした。 ゆっくりと伸ばされる手。 ひんやりとしたその手が触れた頬。 「泣いてもいいんだよ」 重ねて告げられた言葉。 胸が、熱くなるのを感じた。 けれど、それだけだった。 涙をもう流れ落ちはしなかった。 そんな私を見て、マジック様はいっそう辛そうな顔をした。
『BLEACH』16巻138話の八番隊隊長と副隊長の七緒ちゃんを、 パパとティラと妄想で変換↓【05.03.05】 「ティラミス…どうしたらいいかな」 心が、弱くなる。 迷いが、消えない。 選びたい道はあるのに、それが正しいのか解らない。 「…何故、私に訊かれるのですか?」 そうだね。 どうして、お前に訊くんだろう。 ごめんね、って言おうとしたら、 それを遮るようにティラミスが言葉を続けた。 「どうせ私が何を言っても、 ご自分の好きにしかなさらないくせに」 その言葉に、驚く。 何処か責めるようであり、突き放すような言葉。 けれど、見守ってくれているような温かさ。 視線をあげれば、無表情のティラミス。 そして一瞬だけ口元に笑みを見せ、 次の瞬間には殊更、怜悧な表情を作った。 「…ご心配なく。 私はせいぜい面倒に巻き込まれないように 数歩さがってついて行かせて頂きますから」 さがって見ているだけじゃ、ないんだね。 ついて来て、くれるんだね。 参った。 本当に―― 「…参ったね。 それじゃ、僕だけ叱られちゃうじゃないか」 そう呟けば、視界の端にうっすらと笑みを乗せるティラミスが映った。 私も馬鹿だけど、お前も馬鹿だね。
お友達に聞いた実録話で、 シンタローとアラシヤマでシンアラシン風味に変換(ごめん)↓【05.02.23】 「何もない日でも、記念日にしたいどす」 照れたように笑うから、 気が付けば、花でも贈れば、って言っていた。 アラシヤマは馬鹿みたいに目を丸くして、少し嬉しそうに笑った。 ピンポーン、と調子外れのインターホンが鳴り、 扉を開ければアラシヤマ。 「…これ」 言いながら、手にしたモノを渡される。 …花だった。 でも、菊だった。 どう見ても、仏壇用としか思えない菊だった。 「…お前、何が言いてぇの?」 花を持って来たってことは、この前の話を覚えてたってことだろう。 そこまではいい。 でも、菊って何だよ。 陰気臭ぇ奴だと解ってはいたが、菊はないだろ、菊は。 次第に機嫌が悪くなっていく俺に気づいたのか、 アラシヤマは慌てて口を開いた。 「ち…違うんどす。 あの…わて、本当はちゃんと花屋で買ってくるつもりやったんどす。 でも、その…仕事長引いちゃって、何処も花屋閉まってて、 それで片っ端からスーパー巡ってやっと見つけたのが…」 それだったんどす、と小さく告げられた。 しゅんといつも以上に小さくなって俯いて、 怒られるのを覚悟した殊勝な態度。 なんか見てたら、可哀想になった。 よくよく考えれば、今は結構遅い時間で、 こんな時間まで開いてるスーパーも少ないの花を探しに駆け回り、 挙句見つけた菊の花を、後生大事にここまで持って来たってことは、 それなりに奇異な目で見られただろう。 馬鹿だ、と思うのと同じくらいに愛しくなる。 でも、それを伝えられるほど素直なワケもなく。 「あー、もういい。さっさと入れ」 それだけ言うのが精一杯。 照れて、ほのかに赤くなった頬は知らない。 でも俯いたまま入ってくるアラシヤマは、気づかない。 そんな何でもないけれど、特別な日。
ティラとチョコとマジックの出会い。【05.02.11】 毎日、飢えていた。 食べるモノなんて何処にもなくて、 歩いても歩いても焼けた大地と崩れ落ちた家と腐敗臭を撒き散らすモノばかり。 その上冬が近づいてくるせいで、寒さが身にしみる。 チョコレートロマンスとふたりで肩寄せ合っていた。 地面に横になって蹲っていたら、、 遠くから規則正しい音が近づいてくる。 まだ人がいたんだ、とぼんやり思う。 悪い人かもって思うけど、動く力なんて何処にもなくて、 向き合って横になるチョコレートロマンスと視線を交わしながら手を握った。 伝わってくる温もりだけがすべてで、他のことを何も考えられない。 この足音の主が、通り過ぎても足を止めてもどうでもよかった。 もっと言えば、何処かに売られるんだとしても別にいい。 ただ繋いだこの手を離さないでいいのなら、本当にどうでもよかった。 足音は次第に近づき、ふいに止まった。 視線をやれば、黒い磨き上げられた軍靴が。 それを視線だけで辿っていくと、 赤い服があり、黒いコートがあり、青い目と金の髪があった。
ちみっこシンちゃんとハーレム↓【05.02.04】 久しぶりに遠征から帰って来たハーレム。 マジックは入れ違いに珍しく自ら指揮を執りに戦場に。 ひとり残されたシンタローの様子を気遣って、 部屋に顔を出せば、床に座り込んだまま目を見開き呆然とテレビを見ていた。 「…おい、どうした?」 無意味に響いた声に、シンタローが驚き肩を震わしながら振り返る。 振り返ったその顔は、酷く青かった。 「…気分、悪いのか?」 言いながら近づけば、シンタローはテレビを指差した。 見れば子どもらしくもなく、ニュースを見ている。 死体が転々と転がってる荒涼とした大地を映しながら、 アナウンサーの抑揚のない声が、死者と負傷者の数をあげている。 思わず舌打ちした。 寄りによって、マジックが今出向いている場所だ。 シンタローは、知っているのだろう。 「…パパ、大丈夫…だよね?」 今にも泣き出しそうに目を潤ませながら、声を震わせ訊いてくる。 「当たり前だろ、兄貴だぜ?」 宥めるように頭に手を置けば、シンタローは少しだけ安心したように笑った。 その笑顔に、自分も安堵した。 まだ、何も知らないシンタロー。 戦地にいても、マジックが死ぬことはない。 それどころか、マジックは殺す側でしかない。 シンタローは、何も知らない。 自分の家が殺し屋集団をしていることも、 その頂点に君臨するのが、自分の父親ということも知らない。 知ればどれだけ苦しむのだろうj。 マジックは今は隠しているようだが、それもいつまでもつか解らない。 その時、シンタローは耐えれるだろうか。 マジックを心配して、泣きそうになっているシンタローが。 自分の時はどうだったか、と思い出そうとしたけれど、 そんな昔のことは覚えちゃいなかった。 思いだしたくないだけかもしれないけれど。 いつかは、シンタローも知るときが来るだろう。 ずっと隠すことなどできないのだから。 けれどそんな日が来るとは解っていても、まだ遠ざけたかった。 だから無駄だと解っていても、抱きしめた。 いつか来る未来から、少しでも遠ざけることができるように。
04.11.28 ← Back