後悔は、しているよ。
深い深い後悔を。


けれど、それは君を選んだことではなく――






後悔
傍にあった気配が動き、まだ重たい瞼を開けるとサスケが外を見ていた。 ぼーっと何も表情も浮かべず、外を見ていた。 外からはぼんやりと明るい光だけが漏れている。 まだ、朝には遠い。 「サスケ」 緩慢な動作でサスケが振り向く。 「寝ないの?」 サスケは無言のまま俺を見る。 何も映らないガラスの瞳。 その目に映るのは、きっとアイツだけ。 「サスケ、夜は冷えるから」 顔の傍についてあった手を軽く引き寄せる。 サスケの頭が俺の胸へと倒れこんでくる。 それをさらに引き寄せ、布団をかけなおす。 その間もサスケは、俺から視線を外さなかった。 伸ばされる手。 それは、ゆっくりと左目に触れた。 「…アンタは、後悔していないのか?」 「…何を?」 「俺を選んだこと」 「サスケは、後悔してるの?」 「アンタのことを訊いてるんだよ」 触れられていた左目からゆっくりと手を離し、 やはり視線を逸らすことなく訊いてくる。 「してるよ」 「…」 サスケは一切動揺を表さなかった。 それは、解かりきった答えだったからなのか、 どうでも良かったからなのかは、よく解からなかった。 「けどね、別にお前を選んだことについて後悔してるわけじゃないよ。  ただ、後悔してるのは、  俺が俺である限り、何度だってお前を選ぶってことだよ。  里や、仲間も大切だけど、それよりもお前を選ぶよ。   それほどまで、お前に捕らわれてしまったってことだよ」 ガラス玉の目が、俺を捕らえる。 「俺を選んでも、幸せにはなれないと解かっていても?」 「幸せって、誰が決めるの?  他人が言う幸せってのが、俺にとっても幸せであるなんて一概に言えない。  俺は世間一般で言う幸せになんて、埋もれたくないんだよ。  傷ついても、例え死んでも、お前がいればいいんだよ」 そう言って笑ったら、サスケが一言、馬鹿だな、と呟いた。 相変らず、サスケの目はガラス玉。 その目は、まだ逸らされることなく俺を捕らえていた。 報われない想いを抱いているのは、百も承知。 後悔しているのは、お前と出会ったことじゃない。 後悔しているのは、お前と出会って変わってしまった俺。 後悔しているのは、お前を選んだことじゃない。 後悔しているのは、俺が俺である限り、お前を選んでしまう俺の性。
2003.08.03〜08.04 03.08.29 一部修正 ※Hちゃん一言感想※   →『久々に恋愛だと思った』 Back 解り難いですが、二人は里抜けてます。 細かい設定はないのだけど、なんとなく ↓ サスケ:「俺、里出るから」 カカシ:「そう。じゃあ、俺も行くよ」 サスケ:「…解った」     (↑決して「いいのか?」とか訊かない。       何も映さないガラス玉の目で数瞬見つめてから、       「解った」と言い、そのまま何も言わず踵を返して去っていく・笑) という感じで。